電気工事士という仕事に興味を持ちながらも、「後悔するって本当？」「やめとけばよかったって声を聞いた」と不安になる方は少なくありません。技術職で安定した仕事に見える一方、インターネット上では「つらい」「やめたい」といった投稿も散見されます。では、それは一部の話なのか、実際に多くの人が感じていることなのでしょうか。
よくよく見てみると、こうした声の多くは、事前に仕事の内容や環境をよく知らずに飛び込んでしまったことに起因しています。「思ったより体力が必要だった」「上下関係がきつい」「休みが少ない」といったミスマッチがあると、後悔につながりやすくなります。
だからこそ大切なのは、働き始める前に「どんな仕事なのか」「自分に向いているのか」をしっかりと知ることです。正しく理解し、自分に合った環境を選ぶことができれば、不安や後悔はずっと少なくなります。
仕事内容でギャップを感じやすいポイント
電気工事士の仕事は、配線をつないで照明や機器を動かす――というイメージを持っている人が多いかもしれません。たしかにそれも大切な業務ですが、実際には地味で細かい作業も多く、体力や集中力を求められる場面が多々あります。こうした部分にギャップを感じて、入ってから「思っていたのと違った」と後悔してしまうケースが少なくありません。
まず、現場の多くは屋外または建物の骨組み段階での作業となるため、夏は暑く冬は寒い中で仕事をすることになります。また、場所によっては高所や狭い場所での作業もあり、慣れないうちは怖さや不安を感じることもあります。
さらに、配線や結線といった作業は一見単純に見えますが、図面を読み解き、正確に施工する力が求められます。ほんの少しのミスが後のトラブルにつながるため、常に気を抜けない緊張感のある仕事でもあります。
そしてもうひとつ見落としがちなのが、「チームで動く仕事」であるという点です。一人で作業することはほとんどなく、先輩や同僚との連携が必要不可欠です。報告や相談が苦手だったり、上下関係に強くストレスを感じるタイプの人は、慣れるまでに時間がかかるかもしれません。
こうした現場のリアルを知らずに入社してしまうと、想像との違いに戸惑い、後悔につながる可能性があります。だからこそ、事前の情報収集と心の準備が重要なのです。
賃金や労働環境の実情
電気工事士の仕事は、決して楽ではありません。だからこそ、「これだけ頑張っているのに、給料が見合っていない」「休日が少なくて体がもたない」と感じてしまうことが、後悔につながる大きな要因になっています。
たとえば、未経験で入社したばかりの頃は、どうしても基本給が低めに設定されがちです。作業補助や現場の手伝いが中心のうちは、技術料というよりは労働力としての評価になります。ただし、資格を取得し、できる仕事が増えていけば、それに応じて賃金も上がっていきます。最初の段階で「こんなはずじゃなかった」と感じても、焦らず地道に積み重ねることが必要です。
労働時間については、会社や現場によってばらつきがあります。朝が早いのは業界全体の特徴ですが、終了時間や残業の有無は会社ごとに異なります。また、休日の取り方も「日曜固定休」から「完全週休二日」までさまざまです。こうした点が自分の生活スタイルと合わないと、長く続けるのが苦しくなってしまいます。
一方で、待遇が良く、働きやすい環境を整えている会社も確かに存在します。つまり、「電気工事士の仕事がきつい」ことと、「会社選びを間違えた」ことは分けて考えるべきです。入社前に待遇や働き方について詳しく確認することが、後悔を減らすうえでとても重要です。
職場選びで後悔しないためのチェックポイント
電気工事士として働き始めてから「こんなはずじゃなかった」と後悔する人の多くは、実は仕事内容そのものよりも「職場の雰囲気」や「会社の方針」に違和感を覚えて辞めてしまっています。それだけに、どんな会社を選ぶかが非常に重要です。
たとえば、教育体制が整っていない会社に入ってしまうと、現場に放り出されて右も左もわからないまま作業を任され、プレッシャーばかりが募ってしまいます。逆に、先輩がつきそって一つずつ教えてくれる会社では、未経験者でも安心して技術を身につけることができます。
また、現場の雰囲気や人間関係も働きやすさに直結します。年齢の近い人が多いのか、ベテランが多いのか。上司や先輩は話しかけやすいか。こうした点は求人票には書かれていませんが、面接時や職場見学を通じて感じ取れることもあります。
待遇面についても、表面的な給与だけで判断せず、昇給の仕組みや賞与の実績、資格手当の内容などを確認することで、長く安心して働けるかどうかを見極めることができます。特に「資格取得支援あり」と書かれていても、その実態がどうなっているかは事前に確認しておきたいところです。
後悔しないためには、「やりがいがありそうか」だけでなく、「この会社で本当に働き続けられるか」という視点で求人を見ていくことが大切です。
向いていない人の特徴と選び直しの可能性
どんな仕事にも「向き・不向き」があるように、電気工事士にも合う人、合わない人はいます。無理に続けて体や心を壊してしまっては本末転倒です。では、どんな人がこの仕事に向いていないのでしょうか。
まず挙げられるのは、「危険に対して鈍感な人」です。電気を扱う以上、常に安全に気を配る必要があります。「まぁいいか」で済ませるような気のゆるみは、重大な事故につながりかねません。慎重さや確認を怠らない姿勢が求められます。
次に、「チームで動くことが極端に苦手な人」も、現場では戸惑うかもしれません。電気工事は一人では完結しない仕事です。先輩や他の職人とのやり取りが常に必要になります。無口でも構いませんが、報告や相談ができないと、信頼関係が築けず苦労する場面が増えてしまいます。
ただし、もしやってみて「自分には合わなかった」と感じたとしても、それがすべて失敗というわけではありません。電気工事士の資格は、他の業種や設備系の仕事にも応用が利きます。たとえば、点検業務や営業職、現場管理など、資格を活かせる職種は思った以上に幅広いのです。
大切なのは、無理に続けることではなく、自分に合う道を見つけることです。選び直す勇気を持つことも、長く働くための大事な選択肢のひとつです。
後悔しない働き方を選ぶために大切な考え方
電気工事士という仕事が合うかどうかは、やってみないとわからない部分もあります。けれども、事前に情報を集め、自分に合った職場を選ぶことで、後悔のリスクは大きく減らせます。大事なのは、無理なく続けられる環境かどうか、納得できる働き方かどうかという視点です。焦らず、誠実に選ぶことが、自分の将来を守ることにもつながります。
