30代未経験から電気工事士へ転職は遅い?現場で活躍するために知っておきたいこと

「電気工事士って、なんとなく負け組っぽいよね」――そういった言葉を見たり聞いたりして、不安になったことがある人もいるかもしれません。手に職をつけられる専門職なのに、なぜそんなイメージがあるのでしょうか。


理由のひとつとして考えられるのが、体を動かす仕事に対する世間の先入観です。スーツを着てデスクワークをする仕事が「上」、現場で汗をかく仕事が「下」といった価値観が、今も一部には根強く残っています。また、ネット上では、個別のきつい経験談だけが強く印象に残りやすく、現場の全体像が伝わらないこともあります。


けれども、実際の現場では、技術を身につけて自信を持って働いている人たちが多くいます。そうした姿は、表に出にくいだけで、決して「負け組」とは言えない現実があります。言葉に振り回されず、実際にどんな仕事で、どんな人が活躍しているのかを見ていくことが大切です。




働き方と待遇面の実情とは

電気工事士の働き方について、長時間労働や低賃金といったイメージを持たれることがありますが、それは一部のケースでしかありません。実際には、労働環境や待遇は会社によって大きく差があります。職人の世界も今では働き方改革が進み、以前とはずいぶん変わってきています。


たとえば、残業時間の削減に取り組んでいる会社や、週休二日制を導入している現場も増えてきました。また、職務手当や資格手当が支給されることで、年齢や経験に応じた評価がなされる仕組みも整いつつあります。実力が正当に認められる環境があれば、収入も安定しやすく、長く続けることができます。


さらに、技術力が上がれば上がるほど、専門性の高い工事や責任ある仕事を任されるようになり、報酬も上がります。資格を取得し、現場での経験を積めば、20代後半〜30代で月30万円以上を目指すことも現実的です。現場をまとめる役職になれば、さらに上の収入も期待できます。


つまり、最初の会社選びや努力の積み重ね次第で、働き方も収入も大きく変わるのが電気工事士という職業です。イメージだけで判断せず、自分に合った職場環境を見つけることが、安定した働き方への近道になります。




体力的にきつい?仕事の負担とやりがい

現場仕事というと、「体力がないと無理」「毎日くたくたになる」といった印象を持たれがちです。たしかに、屋外での作業や高所での作業があるため、一定の体力は必要になります。真夏や真冬の作業はきつく感じることもありますし、重い工具や資材を扱うこともあります。


ただ、それだけで「きつい」「つらい」と決めつけるのは早すぎます。慣れてくれば、体を使うことにもリズムができてきますし、工夫しながら作業を進めることで負担を軽減することもできます。最近では、道具や作業服の改良も進んでおり、体への負担を減らす取り組みも広がっています。


また、工事が完了したときの達成感や、自分が関わった建物が形になって残るという実感は、他の仕事ではなかなか味わえないものです。配線がうまく収まり、照明が点灯した瞬間の喜びや、チームで一丸となって現場をやり遂げたときの充実感は、この仕事ならではのものです。


大変な面があるのは事実ですが、それ以上にやりがいや手応えを感じられる場面が多くあります。体力的なきつさばかりが強調されてしまいがちですが、実際には多くの人が「続けてよかった」と感じている仕事でもあります。




将来性と資格の活かし方

電気工事士としての将来性は、決して悪くありません。むしろ、今後さらに必要とされる職種のひとつと言えます。というのも、社会全体が電気に頼る場面がますます増えており、それに伴って専門的な知識と技術を持った人材の重要性も高まっているからです。


家庭用の電気設備はもちろん、太陽光発電や電気自動車の充電設備、蓄電池、空調機器など、扱う分野は年々広がっています。特に省エネや災害対策への意識が高まっている今、既存の住宅や建物に対して「後から手を加える」仕事も増えており、新築一辺倒ではない多様な現場で活躍できる機会があります。


こうした分野で力を発揮するためには、資格が大きな意味を持ちます。第二種電気工事士は入門的な位置づけですが、これを取得することでほとんどの住宅系工事に関わることができます。さらに第一種を取得すれば、より高圧の設備や大規模な施設にも対応可能となり、任される仕事の幅が大きく広がります。


加えて、経験を積んだうえで「電気主任技術者」や「施工管理技士」といった上位資格へ進む道もあります。これらを取得すれば、工事全体の管理や設計、安全責任者などとして働くことができ、現場での価値がさらに高まります。


努力が確実に報われる仕組みがあるからこそ、「将来が見えにくい」と感じている人にとっては、むしろ安心できる道とも言えるでしょう。




世間のイメージと現場のリアルの違い

外から見ているだけではわからないことが、現場にはたくさんあります。電気工事士という仕事もそのひとつです。世間では、「きつい」「汚い」「危険」といった印象を持たれることがありますが、それだけで仕事の価値を決めつけるのはあまりにも一面的です。


現場の人たちは、確かな技術で配線を収め、建物全体の安全を守るという大切な役割を担っています。ミスが許されない環境の中で、正確な判断と丁寧な作業を積み重ねている姿は、まさに職人そのものです。そうした仕事ぶりを間近で見ると、むしろ尊敬の念を抱くことさえあります。


また、今では道具や作業着の進化、労働時間の見直し、安全管理の徹底などにより、昔のような「きつくて危ないだけの仕事」ではなくなっています。現場の整備が進むことで、より快適で働きやすい環境が整いつつあります。


一方で、こうした変化がまだ十分に知られていないという問題もあります。そのため、古いイメージだけが一人歩きしてしまい、「負け組」というような誤解が生まれてしまうのです。


実際に働いている人の多くは、やりがいと誇りを持って仕事に取り組んでいます。数字や肩書きでは測れない価値が、現場にはたしかに存在しています。




本当に負け組なのか、自分の働き方を見直す視点

「負け組かどうか」を決めるのは、まわりの声ではなく、自分自身の納得です。どんな仕事にもきつい面はありますが、誰かの役に立ち、必要とされる実感を持てるかどうかは大きな違いです。電気工事士という仕事には、確かな技術と努力が報われる道があります。表面的なイメージではなく、自分にとっての働きがいを見つめ直すことが、答えを出すための第一歩です。